ベアレンが微発泡ワインブランド「Our Hour(アワーアワー)」を2022年に立ち上げた。このブランドについての説明と商品を少し深く紹介していきたい。
なぜ、果実酒で提案するのか?
新商品の発売は、通常(大手)の場合、営業チームが市場調査→商品開発→販売、という流れが多い。またメーカーの場合は、「プロダクトアウト」という考えがある。つまり「造りたいものを造って世の中に提案したい」という考えだが、こちらは新たな市場を創る可能性に満ちている。
ベアレンは、この20年間、「地域密着型」で製造販売してきた。
少人数でスタートしたためか、営業チームと製造チーム、そしてスタッフのアイディア集約の回転が早い。そのため、地域の企業活動の中で、ファンマーケティングと同時進行でプロダクトアウトしているようなスピード感がある。
私達ベアレンにとって、このような商品開発のサイクルの中では、地元の農産物を使用すること-それも生産者の顔の見える-は、とても重要なことだと思っていた。
とりわけ、岩手県における果実は種類のバリエーション、質、量、どれも魅力的で、新商品開発を検討する上では、具体的に商品化を見込めるものも多い。そのため私達にとって岩手の果実を商品開発に使用するのは自然の流れだった。
葡萄を検討した理由
酒類の製造において、酒類別に製造免許が税務署より交付されている。酒造メーカーは、免許の無いお酒の種類は造ってはダメ、ということになる。例えば、清酒免許は有るが、ビール製造免許は無い、という場合、ビールを製造することはできないし、発泡酒も果実酒も製造できない。
ベアレン醸造所では、ビール、発泡酒、果実酒の免許を取得しているので、シードルやワインの製造も可能。2021年のラインナップには、果実酒として「ドライサイダー」「ゆずサイダー」を製造してきた。その延長線上で果実酒を考えた場合、岩手県の果実の生産量からいって、葡萄を使用することは自然の流れであった。
ワインを製造するか?強みは何なのか?
そもそも北山工場において、ビール製造だけで製造能力の上限に近づいていた。この状況でワインを製造するとビールを減産しないといけない。ビールを欠品させては、本末転倒ということになる。また、ワインを製造したところで、岩手県内でワイナリーは多く、マーケティング的に埋没してしまう。これら全てを解決する方法として、他社との協力体制をとった「コラボ戦略」だった。
ありそうで無かった、飲みきりサイズの『スパークリングワイン』
ワイン製造はワイナリーで行い、ベアレン醸造所へ液体を移動させて加工しスパークリングワインに仕立てる。それによって小型瓶のスパークリングワインを提供できることになる。通常、スパークリングワインは750ml瓶が多く、小瓶がない。そのため「一回開封しちゃうとなぁ、飲みきりがキツイんだよね」という人も多いだろう。
一方で、ベアレンビールは330ml瓶の為、飲み続けられるが「ハレの日ビール」の立ち位置になっている。その両方の良いところを合わせて誕生したのが、ベアレンのスパークリングワイン「Our Hour(アワーアワー)」だ。
「ベアレンらしさ」のその先の商品。
「Our Hour(アワーアワー)」は地元生産者、ワイン醸造所の協力によって、開発され製造されている。
「地元の魅力は見えにくい」というのは定説だが、幸いベアレンの場合、岩手県内の取り組みが多く、「おらが町の魅力」を教えてくれる人たちにも支えられている。この環境の中で商品開発をすることで、「ベアレンらしさ」が育まれ、その商品を発信することで、また新たな取り組みが生まれている用に思う。
私達は、ビール造りやお酒の伝統を大切にしつつ、地域密着の中で、これからも魅力的な商品を届けていきたい。
2023年7月30日 高橋司
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