ケラー

ベアレン醸造所では珍しく、ビアスタイルではない商品名の「ケラービール」。ケラービールとは一体何か?ベアレン醸造所が考える「ケラー」とは何か?

「ケラー(Kellre)」とはドイツ語。

ケラー(Keller)とはドイツ語で地下室を意味しており、かつては(といってもリンデがアンモニア式冷凍機を開発する以前の19世紀頃のこと)ビールの貯蔵を地下室でおこなっていた。当時のビール醸造所では洞窟を掘って地下室を作り、ビールは3、2階で醸造。重力を利用して下の階層に液体を移動させながら、発酵→貯蔵、と地下に移動するような建物の構造になっていた。

それゆえ、ケラービールは、醸造所が出荷前に地下室で貯蔵しているビール、を意味しており転じて一般的には、その醸造所の主力のラガービール(それ以外は聞いたことがない)の無濾過のビールを指している。ラガービールは通常は濾過して出荷するために、濾過前のビールは醸造に携わる人しか飲むことのできない、特別なビール」ということになる。

【写真】シュミット“博物館”醸造所(Museumsbrauerei Schmitt)

http://baeren-tsukasa2013.seesaa.net/article/354623555.html
(過去のブログ「ベアレン・ツカサのドイツ・オーストリア出張報告記」より転用)


そういった特別なビールはドイツでは直営店所併設のレストラン、イベントなどで限定で提供されることが多い。

ビアガーデンの意味もある

南ドイツのフランケン地方では、ケラーから醸造所のビアガーデンに通じているようなところもある。(それが語源か解らないが)醸造所隣接の直営レストランを指すこともある。

要するに、「ケラー」とは醸造所が持つ「原風景」

思うに、醸造所が地元に愛されているビール ―結果的に主力ビール― を理想的なシチュエーションで楽しんでもらうことではないか、と思う。

フランケン地方には通称「U」と呼ばれるケラー(ビール)がある。それは、無濾過、非加熱、非炭酸ガス置換(炭酸が抜けている)「Das unfiltriertes und ungespundetes und unpastiziertes Bier=『U』」のことを指し、ことさら特別な存在だ。

ベアレン工場前イベントでは、樽詰めした限り無く「U」に近いケラーを沢山飲んでもらう機会がある※。

これは盛岡のベアレン醸造所に来てもらわないと飲めないが、今年ボトルのケラーを発売することにした。このケラーは熱殺菌して常温流通させるため、「U」ではないが、20年間愛されてきたベアレンクラシックを無濾過で瓶詰めしている。

盛岡に来られない人も、イベントに来られない人もぜひ味わってもらいたい。

そしていつか、願わくば工場前で樽生のケラーを飲んでもらいたい。

※工場前ビール祭りで提供する「ケラー」は無濾過、非加熱。ベアレンの主発酵は、開放タンクによるもので、熟成期間も人工的に炭酸ガスを溶け込ましていない。

2023年5月26日 高橋司

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