コローニアについて(2)

ベアレンの周年記念ビール「コローニア」は、ドイツでは「ケルシュ」と呼ばれケルンの特産ビールとして有名だ。
ベアレン醸造所が、創業当初初めて製造したビールの「コローニア」。そして、樽生だけで提供した「ヴィース」についてご紹介する。

ケルシュ協定と地域性

ドイツのケルシュには厳格な規定がある。この規定については、前回のブログで触れたが、今回はもう少し深掘りしたい。

もともと「ケルシュ」という言葉自体が「ケルンの」や「ケルンの方言」といった意味もあり、一般名詞として認知されていたが、ビールとしての「ケルシュ」を1980年にケルン高等地方裁判所が原産地の保護地理的指定を認めた。
ビールとしての「ケルシュ」の人気が広まるにつれて、「ケルン以外の都市で造られるケルシュ」が、地元「ケルンで造られるケルシュ」を営業的に侵害していき、消費者の混乱を招く。
簡単な例で言えば、「盛岡で作ったメロンを『夕張メロン』として売ってはダメ」というわけである。このように、付加価値を生む地理的表示は、それ自体が財産という考え方になっている。

保護されているから、差別化が難しい

ケルシュを製造している醸造所が、ケルシュ協定を結び厳格にケルシュを定義している一方で差別化は難しくなる。
例えば、「上面発酵」「淡色」「ろ過をしている」などが定義されている。(これ以外にもドイツの初期麦汁濃度のカテゴリ指定、発酵度なども指定されている)
ゆえに、原産地呼称保護されている一方で、ビアスタイルを厳格にしてしまったがゆえに、差別化は難しい。とはいえ、味わいの違いは「ケルシュを沢山飲むこと」でわかってくる。
つまり、「沢山飲めるかどうか」は飲んで試すしかない。

名前でもケルシュは差別化ができない

また、元祖ケルシュ「Ur-Kölsch」や本当のケルシュ「Echt Kölsch」のような表示も認められていない。だからこそ、ケルシュを製造する醸造所ごとのブランディングが重要になる。

無濾過はヴィース。味わいの幅と個性が現れる。

ケルシュの無濾過を「ヴィース(Wiess)」と呼ぶ。これは白を意味する「ヴァイス(Weiss)」が訛っているのだろう。呼び名にも方言が含まれ地元の愛着を感じる。地元の醸造所では無濾過のケルシュをヴィースとして提供している。この味わいにはかなり差が生じる。運が良ければ、現地ケルンで樽生で複数の醸造所のヴィースと出会うことがあるかもしれない。その時はぜひ飲み比べてもらいたい。

地域戦略とヴィース

ベアレンでは、コローニアとしてケルシュタイプのビールを流通している。
創業当時は、樽生限定として製造販売したが、現在は複数商品の内の「1商品」ということで流通させている。そして、20周年の今年は特別に「ベアレン ヴィース」として少量を樽詰めして販売した。(2023年5月に直営レストラン中心に極少量出荷)
実際に飲んでみるとわかるが、無濾過のケルシュは時間の経過とともに味わいの変化が大きく、良いコンディションで提供するには「期限」が短い。それ故に、造りたての状態でなるべく早く提供できる環境が必要になるわけだが、これは正に「地元でなければ飲めない」醸造所ならではのビールと言える。

だから、ベアレンでは、醸造所の特性(個性)を活かしたビールを物流網を通じて展開しつつ、「とっておき」は地元で最高の状態で飲んでもらいたい、と考えている。

2023年5月17日 高橋司

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