まず初めに・・・今回のコラボビールについて「ベアレンにしか出来ない企画だったのではないか」という自負がある。そんな渾身の商品開発だった、と言えるビールについて語りたい。
コラボ企画に取り組むにあたり、文献を調べる。
130年前、1890年ごろの業界事情はどんなものだったのか?
実は、日本国内においてはラガービールが作られ始めた年だったが、世界に目を向けてみるとカリフォルニアでラガー酵母を使ったビールが作られ始めていた。
カリフォルニアコモンビールについて
通常、ラガー酵母を使用する際には、低温で発酵、熟成させてつくる。しかし、当時は温度管理が難しかったのか、-それとも意図的なのかはわからないが-、比較的高温で発酵されて作られた、ハイブリット的なビール造りが始まり、後に「カリフォルニアコモンビール」と呼ばれるようになった。
「スチーム」ビールと表現されたビール
このビールのスタイルで有名なのがアメリカ、カリフォルニア州にあるアンカー醸造所である。このハイブリッドビールが樽から開栓した際に蒸気のように吹き出す様子を表して「スチームビール※」と呼び、その人気を不動のものとした。
※スチームビールはアンカー社によって商標登録されている。そのためビアスタイルとしては「カリフォルニアコモンビール」と呼ばれる。
130年前の蒸気機関の時代からの復刻ビールへの挑戦
100年以上前の醸造設備を現代も使い続ける、ベアレン醸造所だからこそ、このビールにチャレンジする意味があるのかな、と思う。そんな機会を与えてくれた地元JR盛岡駅の方々、及び関係者の方々には造り手として感謝したい。
さて、味わいですが・・・
ラガー酵母を高温で発酵させるとどうなるのか?
実際、テスト醸造などでチャレンジされた業界関係者はご存知だと思うが、エール酵母(上面発酵酵母)で発酵させた時と似通ったエステル香が感じられる。今回のビールは、かなり贅沢に麦芽を使用しているので、モルトの風味と華やかな上面発酵の香り、使用したアメリカンホップのフローラルで少しだけ完熟した洋梨のような香りがバランスよく、一体感をだしている。たった1回の仕込みの限定ビールで、数量は少ないのだが見かけたらぜひ味わってほしいビールである。
2020年10月19日 高橋司
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