ベアレン ゆずサイダー2021

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輸出を想定した初めての商品開発

ゆずサイダーの商品開発自体は2019年の早い段階から準備を進めていた。
当時、ベアレン醸造所では海外向けにビールの出荷が伸び始めており、自らの強みを見つめ直していた時期でもあった。色々と考えた末に、行き着いたベアレンの強みといえば、「地域性」「多様性」だろう。
商品開発において、多くの引き出しを持ち、さらに地域性を生かして様々な種類の果実を使いこなす。そんな、ベアレンの海外担当者からドライサイダーの「日本らしいアレンジ」ができないだろうか、という提案が出され、商品開発がはじまった。

日本らしい柑橘との組み合わせ

すでに、ドライサイダーの製造ではお客様から高い評価を頂いており、中には本場英国でも飲んできた経験のある方からも「ベアレンのドライサイダーはクオリティが高い」と感想を頂いていた。そんな中、新たにアレンジを加えるとなった時に、「ベアレンらしさ」「日本らしさ」を踏まえた上で、過去にビールの商品開発でも経験のある柚子を使用することになった。

柚子を使用したことがある方は、ご存知かもしれないが、柚子は果汁に香りのエキス分が強く感じられ、果皮はそれほどでもない。それぞれに使い方に一工夫必要となる。ベアレンでは、ビールの場合はホップとの相性もあるため果皮を使用し「岩手ゆずヴィット」としてリリースしている。

しかし、このドライサイダーに関しては自然なリンゴの果実味を引き出すためにゆず果汁を使用している。

日本のリンゴは、主に生食用として栽培されているので、そのまま食べると非常に甘く、渋みはほぼなく、弱めの酸とのバランスで幾らでも食べらるような世界的にも類を見ない美味さと評されている。反面、サイダーにしたときには、渋みがない分綺麗にできるが、味わいのバランスが取りにくい。ここに柚子果汁が加わることで、口に含んだ時のフレーバーが絶妙な一体感と安定感を生むことになる。

輸出出来ない事態に!

主に、2020年の輸出向けとしてベアレン醸造所では製造準備をしていて、2019年収穫のリンゴから醸造。2020年春にむけて出荷のスタンバイが整っていた。しかしながら、新型コロナウィルス感染拡大により、海外向けの物流が滞ってしまい、半年以上工場内で保管されていた。最終的には2020年産のリンゴの収穫が始まるまでに海外出荷の目処が立たなくなってしまったため、やむを得ず国内での販売に変更することになったのだった。

フジシードルチャレンジに出品

ベアレンでは、通常コンクールの類には出品しない。しかし、ドライサイダー、ゆずサイダーは「いったい、他者の品質と比較してどの程度の立ち位置なのか?」という現状確認の意味も込めて、出品することにした。結果は、専門家の方にも高い評価をいただき、最高賞をいただいた。果実酒における、ベアレンの新たなチャレンジが高い評価をいただけたことを嬉しく思う。

通常の(単一果実で醸造する)果実酒は、生産者が作る果実の個性が強く出る傾向にあるので、ビールに比べて農業的要素が出やすいと思う。

一方で、ゆずサイダーは、造り手(醸造者)の技術的要素も多分に表現されているので、飲み手からすれば「岩手のリンゴと、地元醸造所のベアレンの個性」を楽しめる果実酒と言える。

ドライサイダー、ゆずサイダーの両方に言えることだが、私達としては、どちらも果実酒だからといって(良くも悪くも)果実の出来のせいにはせず、ベアレンが作るブランドとして全てに妥協せず自信をもって今後も送り出していきたい。

2021年11月20日 高橋司

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