ドライサイダーについて(その2)

サイダーのヴィンテージについて

最近では、「クラフトビール」という単語に加え「クラフトサイダー」という単語も耳にするようになった。最近注目度が高まっているサイダー。ベアレン醸造所でも「ドライサイダー」という商品名で2014年から毎年発売している。(当時の商品名はイングリッシュサイダー)

今回は、その年代差についての話を掘り下げたい。

農産物的な要素

ドライサイダーの原材料は「岩手県産リンゴ」のみ。しかも濃縮還元果汁ではなく、自分たちで絞る「フレッシュジュース」で仕込み、加水も補糖(砂糖を加えること)もしていない。
これは、つまり果実の出来がダイレクトに液体に反映される、ということを意味する。
また、果実自体は長期間安定的に保管することができない。(果汁や濃縮加工することでは保管は可能になるだろうけれど・・・)
つまりリンゴのお酒のドライサイダーは、収穫時期が限られる果実を使用しているので、その年の出来の差が反映されるともいえる。

通年で製造→販売するビールとの根本的な違い

一方、ビールの原材料となる大麦、ホップなどは、一年を通じて安定的に品質を保つことができる。大麦は麦芽化され焙煎乾燥、ホップはペレット化し一定の品質で保管することができ、さらに現在では世界中で流通することが可能となっている。
つまり、ビールの場合は地球上どこでも原料が確保でき、なおかつ北半球、南半球で収穫され流通する。そのため一年中安定的に製造することができる。

グラデーションとコントラスト

だからこそ、ビールの製造においては、「いつ製造したのか?」ということが日別で管理することになり、果実酒のドライサイダーは年別で管理することになる。
つまり、同じ醸造酒だが、ビールの場合はグラデーション的に管理され、一年というサイクルで管理されるサイダーの場合はコントラスト的になる。

例えばタイムマシンがあるならば・・・

果実としてのヴィンテージ差と果実酒としてのヴィンテージ差、この違いは「果実の種類」によって大きく異なる。例えば、ぶどう、リンゴ、洋梨・・・収穫年差、土地差、品種差、追熟差などで差が出るものと出にくいものは間違いなくある。贅沢に造っているからこそ、ベアレン的には経年変化も楽しみつくす。
果実の収穫年差は、(特に生食用ならば尚更)比較できない。

例えば、タイムマシンがあるならば、今年収穫したりんごを持って、昨年の収穫時期に収穫したリンゴを食べ比べ酸味や甘味のバランス、食感などを比較することはできるが、実際はそうはいかない。
同様に、「出来たてのサイダー」を出来た年の差で比較することはできない。
しかし、ヴィンテージによって出てくる差、つまり経年変化の差というのはサイダーならば飲み比べできる。

「時間の経過を飲む」というのはどこか、―月並みな表現だが―、ロマンチックで、お酒の魅力の一つだと思う。

ベアレン的には、そういったこともお酒の魅力の重要な一つとして伝えていきたいと思う。

2020年11月23日 高橋司

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