岩手県山田町オランダ島ビール

ベアレンが初めて地域名を入れたコラボビール。この商品は如何にして製品化されることになったのか?

きっかけは東日本大震災

2011年3月11日は、東日本大震災によって多くの人が大変な思いをした。岩手県を中心に創業のころから地域密着で営業活動をしてきたベアレン醸造所も例外ではない。当時、まさに3月11日当日は山田町のかき小屋で「ベアレンビールを楽しむ会」を企画していた。現地の取りまとめをしていたのは、地元スーパーの間瀬さん(当時専務、現在は代表取締役社長)。当初はベアレンの嶌田(当時専務、現在は代表取締役社長)が行く予定だったが、この年から私(ツカサ)が引き継ぐことになっていた。

イベント会場だった三陸沿岸山田町のかき小屋が流され、音信不通に

担当になった私が、車にベアレンビールを満載にして、盛岡から山田町に向かったが、途中で被災。それでも会場にむかったが、途中で道がなくなっていて、現地で会うことができずに盛岡に引き返す。当時は停電で誰とも連絡がとれない状況がしばらく続いた。とりわけ沿岸部は通信基地局が地震による影響で破壊されていたので、間瀬さんとも音信不通となっていた。

「生きてますよ~」と突然の電話

数日後、嶌田と私に、間瀬さんから電話が入る。第一声は「生きてますよ~!」だった。「『生きている』という情報」それが一番大事な情報だった。(無事だったんだ、、、良かった)と心底思った。山田町は途中の道が瓦礫で塞がっていて、数日間現地にいけなかったので、生存確認ができない状況が続いていた。

特産品が無くなる

その後、多くの方々が復興に向けて被災地に入ることになるのだが、せっかく来ているのに販売するお土産がない。間瀬さんが嶌田に「なんかできないですかねぇ?」と相談したのも、そんな状況が続いていたためだ。これをきっかけに、ベアレン初になる地域名がはいったビールが開発された。山田町の象徴の「オランダ島」をデザインにいれた、岩手県山田町オランダ島ビールだ。商品名自体が町をPRする、ベアレン初の「地域コラボビール」だった。

ビール売上の一部が山田町に寄付される仕組み

このビールを販売するにあたり、山田町とも確認し、売上の一部を山田町に寄付する仕組みにした。ビールを飲むことで、山田町の復興の一助になる。「寄付」としたのは、使用用途が限られないようにするためだ。当時から「復興は長く続くだろう」と想像し、お金の使い道も自由にしたほうが町のためになる、と考えたからだ。

あれから、13年

震災後は毎年3月10日にベアレンビールを楽しむ会を山田町のかき小屋で行っている。3月11日は追悼のイベントや命日を迎える方が多いためだ。

このビールを飲むたびに、私達は「ビールにできることは何なのか?」を考えてしまう。

でも、本当は何も考えず「ビールを飲む、そして大切な人と楽しい時間を過ごす。」ということでも良いと思う。そのこと自体が、いつの日か、このビールと共に大切な思い出になってくれれば、十分だと思う。

2024年3月9日 高橋司

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