ベアレン Our Hourは、いわて果実の微発泡ワインシリーズ。岩手の自然の恵みをたっぷり受けて育った果実を贅沢に使って微発泡ワインにしている。今回は、シリーズ初の「甘口」シードルを紹介。香料や着色料は一切使用せずひとつひとつ丁寧に造っているシードルをどう甘くするのか?
ベアレンのシードルは、本当に何も加えない。本格的な造り方。
シードルは、りんごの果汁に酵母を加えて発酵させている。ベアレンでは、果汁を搾汁してからすぐに発酵に移し、その際に糖や香料など加えていない。本当に絞ってから発酵までそのままストレートに製造を進めている。それだけに、りんごの個性が反映される。具体的には「糖」と「酸」のバランスがシードルの個性をつくるわけだが、そこにフレッシュな風味が加わり、ベアレン Our Hourのドライシードルが完成される。
自然な「甘さ」にこだわると、ハードルが高い。
白ワイン酵母を使用して発酵させているが、酵母は果糖をどんどん分解して二酸化炭素とアルコールに変えていく。ビールの場合、ある程度アルコールが上がっていくと酵母の元気がなくなり発酵が落ち着いていくが、ワイン酵母の場合は、糖が無くなるまでいってしまう。つまり「ドライ」な味わいになってしまう。このシードルの製造工程をふまえて、甘く造るにはどうしたらいいのか?糖を添加しないので、もともと存在している「糖を残す」技術が必要になる。
伝統的な製法はキーヴィングだが・・・
キーヴィングという言葉は、聞き慣れないが、シードル製造において甘口を製造するさいに使われる技法である。酵母がアルコール発酵する際に実際には栄養としてペクチンが必要になるが、そのペクチンを分離させる技法。これによって酵母が糖を分解できなくなる。
ビール的な解決方法で甘口に
キーヴィングは、一言で言ってしまえば「シードルの伝統的な技法」で糖を残す方法だが、我々がとったアプローチは「ビール的な技法」。酵母の活動源になるペクチンを分離するのではなく、発酵中の糖が全部アルコールになる前に酵母自体を分離する。それによって、「糖が残って、酵母が無い」状態の甘口シードルが完成する。
アルコール度数は6.5%→5%、糖度ぼぼ0→約5度
アルコール1.5%を分解するエネルギーは大きい。この1.5%を分解する前に酵母を分離することで、糖度が5度程度液体に残ることになる。
りんごの風味は、その味わいのバランス的に糖によるところが大きいように思う。甘口シードルを造ることにより、果実そのものの個性を表現したシードルに仕上がったように思う。シードルの選択肢が広がる、新たしいスイートシードルを一度味わっていただきたい。
2024年3月4日 高橋司
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