昨年まで、本社工場で製造されていたソルティーラガーの「イーハトーブの海」。
今年は、雫石工場にて350ml缶で発売した。ラガービールと塩について、そしてラベルの意味について思うことをまとめた。
コンセプトビールとして始まる
2021年から製造しはじめ、当時は日本財団の「海と日本プロジェクト」の趣旨に賛同して限定ビールを作り始めた。海に面した岩手の企業だからこそできること、と考えて始めたプロジェクトとなっている。当時の記事はこちら
暑い時期のラガービールの提案
2023年は、ベアレン醸造所が限定ビールの見直しを強化している。その中において、カットされたビールもあるが、反対に残ったビールもある。その一つが「イーハトーブの海」だ。
暑い時期の限定ビールとして、ラードラー系のビールはあるが、それ以外は見受けられない。
味わいのベクトルに、フルーツ系、サワー系、というように系統をつけるとするならば、「塩」はどこにも属さない。「夏=爽やか」という思考で考えると、アルコール度数を低くする思考になりがちだが、違う考え方で提案している。
塩とラガービール
ビールの原材料に塩が加わっているビアスタイルの代表格として「ゴーゼ」がある。このビールは乳酸による酸味と、塩味がバランスよく整っているが、イーハトーブの海は、通常のラガー酵母のみでの発酵のため、塩によるバランスをとるのが難しい。入れすぎると塩っぱいし、少ないとよくわからない。
そのため、世の中に多く存在している精製塩ではなく、「のだ塩」を使用。のだ塩は、海水を窯で炊いて結晶化させる、伝統的な直煮製法(じきにせいほう)で作られた自然海水塩でミネラル感がしっかりと感じられる塩。ビールに使用した際にツンとした塩気は無く、飲み終わりにほんのりとミネラルを感じられる味わいになっている。この味わいは雫石工場で製造しても変わらない。
ラベルに描かれた恐竜の秘密
まるで「ネッシー」のような恐竜が描かれているが、この恐竜は「モシリュウ」(茂師竜)がモデルになっている。モシリュウは、1978年に岩手県岩泉町茂師に露出する白亜紀前期の地層(宮古層群)から化石として発見され、これをきっかけに、日本各地から恐竜の化石が発見されるようになった。「日本列島に恐竜化石はない」の通説が崩れたことで、恐竜化石を探す目が各地の地層に向けられることとなり、日本の恐竜研究はこの岩手県沿岸で発見された「モシリュウ」を機に劇的に進んだとされている。
ことわざで表現するなら「温故知新」
ベアレン醸造所がやっていることは、全体的に温故知新といえるかもしれない。古い醸造設備を所有して、古典的なビールを製造したり、新しいスタイルにチャレンジをしたり、新しい醸造設備で伝統的なビールを模索したり、とその度に私達は「設備を所有しているスタッフの体感として」学びを得てきた。イーハトーブの海のラベルの「モシリュウ」を見ながら私達が提案するビールが、いつの時代か、誰かの古き学びとなって、その時の食卓をハッピーにしてくれたらいいな、と思う。
2023年7月18日 高橋司
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