ベアレン アップルラガー

季節の限定ビールとして、創業間もない頃からの造り続けている季節の限定ビール。意外と知らない製造方法なども少しだけご紹介。

柔軟な商品開発

2005年1月に発売開始。

当時は、ベアレン初のフルーツビールの開発ということで、盛岡市内で手に入る果実を候補にいくつか検討していた。創業年の2003-4年は、社内に、とにかく何でもやってみよう、という雰囲気があった。実際、会社の状況的にはトライアンドエラーをせざるを得ない状況だった。そんな中、いくつかあった新商品候補の中で、最終的には地元で安定的に入手ができる果実のリンゴを選び具体的に製造していくことになった。

自由な発想にも伝統的製法

通常、フルーツビールと言うと「ビールに果汁を加える」という発想が一般的だろう。こういった発想はビール業界でも普通に存在している。というのも、ビール大国のドイツでも南ドイツのラードラー(ビール+レモネード)や、ベルリンのベルリーナヴァイセ(ビール+ラズベリーシロップなど)といった、伝統的に確立されたビアスタイルが存在しているからだ。

そんな中、生食(加熱しないで食べること)が一般的な「リンゴ」という果実の特性を考えた場合、先述のようなレモンなどに比べフレーバーが弱い。そのため単純に、「ビールに果汁を加える」ということでは、味わい的に水っぽくなってしまう可能性があった。

「麦汁」+「果汁」の発酵

最初に、最終的な味わいの着地点を設定。そして、麦汁と果汁を一緒に発酵させることで一体感を作り出せるのではないか、ということで製造することになった。当時の私は、この麦汁と果汁を一緒に発酵させる、という手法に対し「ああ、なるほど、そういう手があるのか」と当時マイスターだった、イヴォ氏の発想に感心した。しかし今思うと、技術的にも精神的にもハードルが高かったと思う。この手法は、phの低いリンゴ果汁を麦汁に加える、ということになるので、場合によってはビール酵母の耐性限度を超え、失活する可能性がある。一度酵母の発酵が失活すると、途中から酵母を加えても復活は難しいので、すべてが台無しになってしまう。

つまりこれは、当時のベアレン醸造所には試作をする設備などもない状況だったため、「1仕込み、3000L単位でのチャレンジ」をしていたことになる。

足し算だけでは一体感が不足する

実際に、発酵が進んでいくと、ビール+リンゴ果汁、という足し算では感じることのない一体感が生まれてくる。ビール酵母が失活しなければ、リンゴの果糖はしっかりと分解されていく。糖度が下がり、甘みがなくなっていき、完成に近づくと、リンゴの淡いフレーバーがビールと一体感を生む。そもそもビールの香りとはホップによるところが大きいため、リンゴの淡い自然なフレーバーはビール自体の香りを邪魔しない。

アロマとフレーバーの先に

熟成を終えたアップルラガーは、低い温度でグラスに注いでもリンゴの香りはあまり感じられない。しかし、ある温度を超えるとリンゴのフレーバーが主張してくる。それは、冷たい状態で口に含むと、口の中で温度が上がり、上品なリンゴの香りが鼻に抜け、同時にホップのアロマがアップルラガーの味わいのバランスを支えていく。

一般的に果実酒は、糖と酸のバランスで味わいが成り立つ。アップルラガーは発酵により、糖度は低くなり、生食のリンゴを使用しているため酸も弱い。このバランスを成立させるためのホップもそれほど大量に使用していない。

つまり、このビールは簡単に言うとフルーツビールでありながら引き算のビールであり、近年のクラフトビールで流行しているフルーツ系ビールとは真逆の哲学で製造されている。

2021年12月4日 高橋司

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