親しい飲食店主より閉店の連絡を受ける

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2016年4月のある日、ベアレン初の駅ビルテナント店「ビア&ヴルスト ベアレン」のオープンから1カ月ほどたったある日のこと。出張中の私のスマホに1件のメッセージが入った。よくしてもらっている飲食店のオーナーKさんからであった。

「嶌田さんには先にお伝えしたほうがいいと思って、連絡しましたのですが、実はお店を閉めようと思っているんです。」

飲食店主がお店を閉めるという話は、まあままある話だ。ベアレン創業から何軒もそう言ったお店があったし、寂しい別れもいくつもあった。当然ながら多くは売上の減少などによる経営の厳しさであるが、他には立ち仕事が中心の仕事ゆえ、年齢的なことも原因になることが多い。飲食業にやりがいを感じなくなった人もいる。Kさんはどちらなんだろう、と真っ先に思った。とっさにメッセージを返した。

「今、出張で東京にいるんだけど、戻ったらすぐに会って話ができない?」

「いいですよ。」

「じゃあ、○日は?」

といった具合に約束を取り付けた。

数日後、彼のお店で会った。

「お店閉めるって、ずいぶん急だね。前から考えていたの?」

「そうですね。ここ数年、何とかお店はやってきていたんですが、先行きに漠然とした不安を感じていて。」

「そうなんだ。立ち行かなくなったというわけではないんだよね。」

「まあ、そこまでではないんですが。。。」

「飲食業自体が嫌になった?」

私はこの時点で引き留められないかを模索していた。このお店が好きだったし、ベアレンのファンの方々が集う、大切なお店の一つでもあったからだ。

ただ、飲食業自体にもうやりがいを感じない。と言われたら無理だと思っていた。ちょうどそんな人が他にいたからだ。

「いえ、飲食業自体は好きですし、できれば続けていきたいんですが。。。」

「でも、ここまでやってきてもったいないよね。」

「そうですね。でもこのまま続けても展望が見えないし、いつまで続けていけるのかなって。子供もできましたし、奥さんと相談して、この辺が潮時かな、と。」

「やめてどうするの?」

「そうですね・・・介護の勉強でもして、介護施設とか、いいかなとか考えているんですけどね。まだ決めていないです。」

惜しい。こんないい店がなくなってしまうなんて。しかも店主は飲食業に見切りをつけていないのだし。今まで培ってきた飲食業のノウハウ、経験を捨てしまうのは実に惜しい。

私はこの事態に身もだえながら、悩んだ。

そして、出張先で一報を受け取ってからずっと頭の片隅にあった、ある一言を発した。

「俺と一緒にやらない?」

「え!?どういうことですか?」

「ベアレンと一緒にこのお店を再建してみない?もったいないよ、こんないいお店をなくすのは。今までの経験だって、まだまだこれから活かせると思うし。」

「そんなことできるんですか。」

「まだ私の思い付きの一言だけど、Kさんがやる気があるなら社内で話をしてみるよ。」

「もし、そうなればうれしいですけど。。。」

「じゃあ、話はまだ進めないで少し時間くれない。」

「はい、わかりました。」

とこうして、話は急展開し、私の新たなチャレンジがまたスタートした。

2021年4月17日 ベアレン醸造所 専務取締役 嶌田洋一

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