起業の醍醐味とは

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2016年年初、私は一つ考えていたことがあった。そのこと自体は前から思っていたことだが、実現に向けて動き出していた。

東京へ出張に行くと、壁に張り付いたような非常に狭いお店があったりする。お店に入るとすぐにカウンターで、気軽に1杯飲んで行ける。たいていスタンディングだ。

こんな気軽に1杯飲めるスタイルがかねてよりいいなと思っていた。

盛岡には意外にこの手のお店が少ない。待ち合わせの時間まで少しあるので1杯だけ飲んでいきたい、帰り際に少しだけ飲み足りないので軽く飲んで帰りたい。そんな時に適当なお店が少ない。知っているお店だと1杯だけで帰るというのも気が引けるのでついお料理もなんてことになってしまう。お店の人からすればそんなことはないよ、となるのだろうが、お店自体がそんなスタイルだったら行きやすいなと気の弱い私は思う。

ないなら私が作ろう。そう考え始めたのも自然な流れだった。

起業とは価値観との共感作りが醍醐味だと私は感じている。私のこんなのあったらいいな、が誰かの価値観と共感して、それいいよね!となった時の満足感は何物にも代えがたい。そもそもクラフトビールがそうである。世の中のビールにもっと選択肢があったら、大手のものだけではなく思いが詰まった、ストーリーがある、作り手の顔が見える、そんなビールがあったらいいのに、そんな思いからのスタートだった。

さまざまな、「こんなのあったらいいな」との共感の積み重ねが今のベアレンではないだろうか。ちなみに私の好きな言葉の一つが「私の好き、はきっと世界の誰かの好きと一緒」である。

ちょっとした時間つぶしにクラフトビールが飲めるお店、さくっとビールだけ飲んで出られるお店、そんなお店があったら。それを提案してみたくなったのだ。

実際に街を歩いて良さそうな場所を探したりもした。大通りのミスドのある交差点、駐車場の角に自販機が並んでいる一角がある。盛岡の中心地に自販機というのも寂しいなと思い、ここにお店が作れないか調べたこともある。そんな色々なアイディアは実現せずにすぎていくのだが、こういうことはやはりタイミングだなと思う。

そんな時に、顔味見知りの盛岡ターミナルビル(フェザン)の方より話が来る。

「盛岡の地下にお店を出しませんか。」

「ちょっと狭いお店なんですが、人通りの大変多いところです。」

なにか運命的なものを感じつつも、慎重に対応する。

「フェザンさんのテナントということですよね。。。」

「そうですね。その分、いろいろフォローさせていただきますよ。」

「一度、お店を見させてもらえますか。」

こうしてベアレンの新たなチャレンジが始まる。

私の価値観との共感作りはうまくいくのか。その成功と挫折について何回かにわたってお伝えしていきたいと思う。

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